2007年度作品。アメリカ映画。
まだ平和だったアフガニスタン。少年時代のアミールとハッサンは強い絆で結ばれていた。アミール12歳の冬。恒例の凧揚げ合戦で優勝したアミールは凧を追っていた途中、ハッサンが街の不良から暴行を受けているのを見てしまう。だが、勇気がなく助けることが出来なかった。以来、気まずさを感じ、アミールはハッサンを遠ざけるようになる。時を同じくして、ソ連軍が侵攻、アミールはアメリカへ亡命する。
監督は「チョコレート」のマーク・フォースター
出演は「ユナイテッド93」のハリド・アブダラ。ホマユーン・エルシャディ ら。
この映画を一言で語るなら、贖罪の物語だ。
主人公は子供のとき、召使の息子である友人がいじめられているのに気付きながら、そこから逃げてしまい、友人と距離を取るようになる。あまつさえは策略で家から追い出すという実に卑劣な行動を取っている。時計のシーンなどは、最悪としか言いようがない。
しかしそれがひどいことであることくらい主人公も知っていたのだろう。だからこそ、アメリカに亡命し恵まれた環境に暮らしていた主人公はもう一度やり直すために、危険を冒してでも前へと進み出そうとしているのだ。その選択はお約束と言えばお約束だが、決して嫌いではない。
その意志的な行動がラストで温かな余韻を生み出してたと僕は思う。
特に、ハザラ人と言わないでください、と義父に主張するところはベタだけどいい話だ、と素直に思うことができた。
しかしこの映画を見ていると人間の運命というものは気紛れなものだな、と思い知らされる。
幼馴染がタリバンになったという真実も運命の変遷を感じさせるが、それ以上に、召使の子供だって父親の選択一つでは抑圧されたアフガンに残る必要だってなかったかもしれない、という点が僕の心に訴えるものがあった。
人間の運命というものは少しの違いで、大きな致命的な差を生むものであるらしい。残酷なものだ。
技術的には構成の上手さが特に光っていたと思う。
名誉を重んじる父の描写が、隠された真実に強い説得力を与えたのが印象深い(逆に言えば、過去に卑劣な行動を取ったからこそ、主人公の父はその後、命を賭けてでも名誉を重んじるようになったのかもしれない、と思った)。
だからこそ、ラストで息子が父の名誉を捨てるような行動を取った点が、際立った印象を与えていた。
物語としてはややきれいにまとまりすぎている感もあるが、優れた出来の作品であることはまちがいないだろう。個人的には好きである。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
出演者の関連作品感想
・ハリド・アブダラ出演作
「ユナイテッド93」
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